2023/08/22
塗装で一番先に思い浮かぶのはローラーや刷毛を使用した塗装で、塗装会社の職人が手作業で塗料を塗っていく姿を見たことがあるかと思います。
屋根塗装で凸凹感のある塗装をしたい、重厚感のある仕上がりを楽しみたい場合は、吹き付け塗装がおすすめです。
吹き付け塗装は、ローラーや刷毛ではできない質感を表現できます。
吹き付け塗装についてメリットやデメリットを主に紹介します。
目次
吹き付け塗装とは?
吹き付け塗装とは、吹き付け専用の機械を使用し、霧状になった塗料を吹き付けて塗装する塗装方法です。
塗装の際には、エアスプレーや万能ガンを使います。
吹き付け塗装の特徴は、独特の意匠性です。
塗料を吹き付けて塗ることで、リシンやスタッコと呼ばれる凸凹した質感の塗装が可能です。
一般的な塗装のように、色を塗ることもできます。
一方で、今では戸建て塗装で吹き付け塗装を見る機会は少なくなっています。
その理由の1つにサイディング外壁が主流になってきたことが挙げられます。
吹き付け塗装はモルタル塗装の際に採用されることが多い方法です。
最近の壁材の傾向として、モルタルよりもサイディングを採用することが増えています。
そのため、施工数が減り、吹き付け塗装を見る塗装を目にする機会も減っています。
また、吹き付け塗装は、多量の塗料が飛散するデメリットがあります。
養生をしっかりとしている場合でも、霧状になった塗料が風で飛んでいき、他の場所に付着してしまうこともあるのです。
風が強い日などは、車や近隣の家を汚してしまうリスクもゼロではありません。
近年、吹き付け塗装は、近隣との距離が近い一般的な住宅よりも、周囲への塗料の飛散が気になりにくい工場で多く採用されています。
屋根塗装の吹き付けのメリットとデメリット
屋根塗装の吹き付けのメリット
1つ目は、様々な表現ができることです。
吹き付け塗装は、複雑な模様や凸凹を作ったり、重厚感のある雰囲気を演出したりと様々な仕上がりを実現できます。
仕上がりに関していうと、一気に吹き付けて塗装するため、ムラになりにくく綺麗に仕上がることもメリットといえるでしょう。
2つ目は、広範囲の塗装をスピーディーに行えることです。
吹き付け塗装では、塗料を噴射することにより、広範囲を一気に塗装できます。
そのため、効率的に塗装でき、工期も比較的短く済むでしょう。
3つ目は、タイル吹き押さえ仕上げで「重厚感」を長く楽しめることです。
吹き付け塗装では、薄い被膜を重ねて塗ることが可能です。
特に、そのメリットが発揮されるのはタイルの塗装です。
タイル吹き押さえ仕上げでは、タイルを3層仕立てで塗り上げます。
何重にも塗料を塗り重ねられるため、ひび割れしにくく、重厚感のある仕上がりを作り出せるのです。
屋根塗装の吹き付けのデメリット
1つ目は、養生に時間がかかる事です。
養生とは、塗料が飛散しないように周りの箇所をテープなどで覆うことです。
スプレータイプの吹き付け塗装は、塗料が霧状のため、風が強い日など遠くに飛んでしまう場合があり、近所の建物や停めてある車などを汚すリスクも高くなります。
そのため、塗料が飛散しても大丈夫なように養生対策を万全におこなう必要があります。
手塗りの工事なら養生しなくてよい場所も覆わないといけないため、時間がかかります。
自分でDIYをするとなると、養生作業だけでもかなり大変です。
養生する場所が多くなると、工事期間も長くなり、場合によっては余計な人件費がかかってしまうこともあります。
2つ目は、騒音が発生する事です。
外壁塗装工事は、音が出てうるさいイメージがあると思います。
一般的な足場の組み立て、洗浄時の音などに加え、吹き付け塗装は特有のエアスプレーガンの駆動音、機械から塗料が噴き出す音などが出るので、通常の工事に比べるとより騒音が発生する事が多いです。
近所の方から「うるさい」などクレームが起こる原因にもなりかねないので、吹き付け塗装をおこなう場合、事前に近隣へ工事のスケジュールやご迷惑をかける可能性がある旨を伝えておきましょう。
3つ目は、塗料の無駄が多い事です。
吹き付け塗装が採用されなくなった1番の原因が、塗料の無駄が多いことです。
エアスプレーガンを使用する手法は、塗料の飛び散りが多いため、特に無駄にする傾向にあります。初めから飛び散ることを見込み、膜厚を確保するように塗布しているので、相当なロスが発生しています。
丁寧に仕上げるには仕方のないことですが、とてももったいないため、扱われることが減少しました。
4つ目は、職人の技術力が必要です。
養生に時間がかかる、騒音の発生、塗料の無駄などがあるため、近年では吹き付け塗装を避ける業者が増えており、吹き付け塗装の扱いが、未経験の職人も多いのが事実です。
そのため、職人の技術力が必要です。
吹き付け塗装を希望する場合、依頼する業者に吹き付け塗装の実績がどれくらいあるのか、HPを見たり問い合わせたりして事前に確認しておくとよいでしょう。
吹き付け塗装の注意点
1つ目は、塗料を多量に使用することです。
塗料を吹き付ける塗装では、塗料の20パーセントが空気中に飛散してしまいます。
そのため、通常の塗装よりも多くの塗料が必要とするのです。
空気中に塗料が飛散することで、周囲へ付着してしまう可能性も懸念されます。
2つ目は、養生に時間がかかることです。
養生とは、塗装しない部分をビニールやテープで保護し、塗料の付着を防ぐことです。
吹き付け塗装は、空気中にも塗料が飛散してしまうため、ローラーでの塗装の時よりも広範囲を養生します。
先ほど解説した通り、塗装自体は早く、効率的に進められます。
しかし、一気に広範囲に吹き付ける工法上、塗料の飛散のリスクがあります。
そのため、養生には時間がかかってしまうのです。
3つ目は、高い技術が必要なことです。
吹き付け塗装では、同じ速度で、一定方向へとスプレーガンを吹き付けることでムラのない綺麗な塗装を実現します。
そのため、スプレーガンの動きにムラがあると動きがそのまま色ムラにつながってしまいます。
吹き付け塗装で綺麗に塗装するためには、スプレーガンの扱いに高い技術を必要とするのです。
吹き付け塗装を検討する際は、実績があり、信頼できる塗装会社へ依頼しましょう。
4つ目は、自然な仕上がりを作るのが難しいことです。
吹き付け塗装で補修する場合、補修箇所にスプレーのように吹き付けて仕上げます。
例えば、壁にひび割れが生じた場合、そのひび割れの場所のみ塗料を吹き付けるのです。
すると、補修箇所だけ新しく塗った塗料が目立ってしまいます。
このように、新しく塗った場所と塗っていない部分にギャップが生じるため、自然な仕上がりになりにくいのです。
吹き付け塗装の耐久性
外壁は、紫外線や雨風などによりどうしても劣化してしまいます。劣化したまま放置してしまうと、ひび割れや雨漏りなどトラブルが発生する恐れもあるので、早めの対応が必要です。
劣化を防いだり、少しでも進行を遅らせるためには、塗装するときの塗料選びが重要になります。塗料によって耐久性が大きく異なるので、どの塗料を使用するのかをしっかりと考えて選びましょう。
外壁塗装で主に使用される吹き付け塗料の種類や耐久性を解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
アクリル系塗料:5年〜8年
ウレタン系塗料:7年〜10年
シリコン系塗料:10年〜15年
フッ素樹脂の塗料:15年〜20年
耐久性の低い塗料から、アクリル塗料→ウレタン塗料→シリコン塗料→フッ素塗料となります。耐久性の低いアクリル塗料と高いフッ素塗料とでは、耐久年数が4倍近く異なりますが、その分費用相場も大きく変わってきます。
塗装工事において、耐久性や費用など、何を重視するのかをよく考えて塗料を選びましょう。
吹き付け塗装とローラー塗装の違い
吹き付け塗装使用する道具:スプレーガンを使用
仕上がり:凸凹仕様の仕上がり
施工時間:比較的短い
厚塗り:可能
塗布時の飛散:かなり多く、養生の手間が増える
外壁の凸凹への対応:凸凹の形状により刷毛との併用が望ましい
ローラー塗装使用する道具:ローラーまたは刷毛
仕上がり:きっちりと整った仕上がり
施工時間:吹き付け塗装より長い
厚塗り:可能
塗布時の飛散:ほとんどない
外壁の凸凹への対応:刷毛と併用するとよりきれいに仕上がる
最近の工事では、ローラー塗装が一般的ですが、要望があれば吹き付け塗装もします。
2つの工法の大きな違いは、仕上がりの模様の違いです。
柔らかく自然な仕上がりになる吹き付け塗装に比べ、ローラー塗装はきっちり整った仕上がりになります。
どのような仕上がりにしたいかが、工法を選ぶ基準となりますので、あらかじめ塗装後のイメージを膨らませておきましょう。
吹き付けの工法の種類
一般的な塗装仕上げ
シリコン塗料やフッ素塗料といった一般的な塗料を吹き付けでおこなう工法です。
使う塗料や塗る回数はローラーやハケで塗る場合と同じです。
特殊な模様付けをおこなわないため、他の吹き付け仕上げよりも価格が安いメリットがあります。
一方で、他の吹き付け仕上げに比べてデザイン性が劣るデメリットがあります。仕上がりをムラなくキレイにしたい人に向いています。
リシン仕上げ
塗料と骨材を混ぜ合わせた材料を吹き付ける工法です。
吹き付け工法としては低コストでありながらデザイン性を高められるメリットがあります。
一方で、汚れがつきやすくひび割れしやすいデメリットがあります。安い価格で外壁に凹凸をつけたい人に向いています。
スタッコ仕上げ
外壁にモルタルや合成樹脂を塗った後、セメントや塗料、骨材を吹き付ける工法です。
吹き付けた後にローラーで材料を押し付けて平坦な模様をつくる手法もあります。
厚みがあるため重厚感を得られる点がメリットです。
一方で、汚れが付きやすいデメリットがあります。
一般的な塗装と同じくらいの価格で独特な模様付けをしたい人に向いています。
吹き付けタイル仕上げ
吹き付けタイル仕上げでは、下塗りの後に模様付けのための材料を吹き付けします。
その後に一般的な外壁塗装(中塗り及び上塗り)をする工法です。
リシン仕上げやスタッコ仕上げは吹き付けをしたら完了なのに対して、吹き付けタイルは下塗り、模様付け、中塗り、上塗りといった4工程以上が必要です。
模様付け以外の工程は、吹き付けをする必要がないため手塗りにすることも多いでしょう。
他の吹き付け仕上げと違って表面がなめらかなこと、ひび割れが目立ちにくいことがメリットです。
デメリットは、他の吹き付け仕上げよりも模様付け段階の難易度が高いことです。また、4工程以上が必要なため費用と時間がかかるのも難点でしょう。
費用がかかってもいいので他の仕上げ方法よりも凹凸をつけたい人に向いています。
また、平らでデザイン性が低いモルタル外壁の場合に適しています。
屋根の吹き付け工事の費用が高くなる条件
雨が多い地域
雨が多い分、痛みが進みやすく防水効果が強い塗料・耐久年数が高い塗料を使う必要があるため、塗装費用が高めになります。
雪が多い地域
板金屋根が主流で、環境ダメージを受けすぎると雪の滑りが悪くなります。
潤滑性の高いウレタンシリコン樹脂などの塗料を使う必要があるため、塗装費用も高くなります。
台風が多い地域
屋根へのダメージが強く、塗装や修理の頻度が多くなります。
塗装だけでなく修理も同時に行うこともあるので、1回ずつの費用も高くなります。
海が近い地域
潮風の影響で金属製屋根の場合はサビやすいので、その分塗装するサイクルが早まります。
塗装サイクルが早まることで塗装回数が増え、将来的にかかる塗装費用が高くなります。
まとめ
主に吹き付け塗装のメリットとデメリットをなどを詳しく紹介しました。吹き付け塗装は意匠性があり、綺麗な仕上がりがメリットの一方で、周囲へ塗料が飛散してしまうことが主なデメリットでした。
吹き付け塗装は、一般的な住宅で採用されることの少ない塗装方法です。
検討の際は、塗装会社に相談し、リスクや後のメンテナンスをはじめ不安な部分を解消するようにしましょう。
吹き付け塗装のメリットとデメリットを知り、知識を深めて下さい。